白山写真ギャラリー

白山の花を撮る 2002/07/06

高山植物は厳しい自然環境に耐えて花開くと言われています。冬は雪に埋もれ、夏でも低温で日照時間が短く、1年で数ミリしか成長できないのです。しかし、高山植物自身は案外快適に思っているのかもしれません。「厳しい」というのは、人間が自分の尺度に当てはめた勝手な感覚だと私は思います。

ところで、白山は中部山岳から孤立した高山で、その高山帯も主峰を中心とした狭い地域に限定されています。そして、2702mという高山帯としては下限の標高。また、これより西には高山と呼べる山域はありません。そのためか、白山を南限または西限とする高山植物が100種を超えると言われています。加えて最近の暖冬傾向があります。「花の白山」と呼ばれますが、そこで咲く花は、高山植物にとってはぎりぎりの環境に耐えています。

高山としては標高、緯度とも低いためでしょうか、白山の花は比較的早期に咲きます。そしてその季節は梅雨と重なるため、白山の花は雨に打たれながら開きます。雨に打たれると花は痛みます。チングルマや、イワギキョウなどは花弁が裂けることもあります。傷だらけになって咲いている花を見ると、よくがんばって咲いてくれたなあと思います。

傷ついた花に罪はありませんが、写真の題材としてはいろいろと不都合があります。写真にしてじっくり見ると、花弁のわずかな傷があらになってしまいます。被写体を探すときには、傷一つない美人花を探さなくてはいけません。はいつくばって、虫眼鏡で見るくらいの気持ちが必要です。

すべての女性は魅力的な個性を持っていますが、モデルになるには、ある意味で人間離れした美しさが必要になります。花も同じことが言えます。ただし、いつしか、花の傷つき耐えて咲く美しさを、ありのまま表現したいと考えています。


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