白山写真ギャラリー

冬の撮影 2001/10/16

この文章は、朝日新聞石川版のコラムを5回連続で連載した際の、オリジナル原稿です。
掲載記事 2001年9月11日 金沢アンダンテ (1)悪天に恐れおののき

白山の撮影は冬でも、基本的に一人です。

冬の白山に登るには、白峰村から歩くことになります。夏なら自動車で入れる別当出合まで、一日で着かないこともあります。単に自動車道路を歩くだけですが、雪が深い年は、スキーを履いても膝ぐらいまで潜り、まっすぐ立っていられないほどの強風を伴う吹雪になったこともあります。そして、別当出合いから頂上まで、さらに雪は深く条件は悪くなり、最悪の場合は三日以上かかります。

登山の常識的な考え方では、冬の白山は、好天を狙ってアタックし、頂上を踏んだらさっさと降りてこなければならない山です。冬の白山は晴れることは稀です。また晴れていても必ずすぐに荒れだします。晴れた白山の頂上でのんびり過ごすのは、極めて危険なことです。

ところが私は撮影が目的です。晴れている冬の白山からすぐに下山はできません。めったにない好天に恵まれた一日は、頂上付近を撮影しまくります。この時、冬山の美しさと登ってきた苦労が報われたことで喜びいっぱいですが、同時に、確実にせまって来る悪天に恐れおののいている自分がいます。

そしてその夜、不安はさらに高まり、寝ていても神経は研ぎ澄まされます。風の音のわずかな高まりにも、寝袋の中で聞き耳を立てます。

そして翌朝、もし晴れていれば、肝を冷やしながらの撮影は続きます。撮影にならない曇天で、まだ荒れだしてなければ、救われた気持ちで下山にかかります。吹雪であれば心を静めて決断します。危険をおかして下山するか、山が鎮まるまで待つかです。

このようにして、白山の撮影を続けてきました。私は白山によって生かされ、撮らせてもらっているのです。


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